「いつもどうやって歯を磨かれていますか?」と質問すると
「ゴシゴシ磨いちゃいますね。」とお答えがよく返ってきます。
力をかけすぎと自覚されながらも、ついゴシゴシ磨いてしまう方が多いようです。
私の家族にも、まるで靴でも洗っているのかというような音と勢いで磨く者がおります。その者は「ゴシゴシ磨いたら、磨いたっ!という感じがする」と満足気です(^-^;。長年の習慣を変えるのは難しいようです。
歯磨きは、歯についた歯垢を取り除くことが主な目的です。この歯垢は粘り気のあるものですが、歯ブラシの毛先が歯の面にきちんとあたれば強く磨かなくても除去できる汚れです。
ゴシゴシ圧をかけて磨くと、「磨いた!」という実感は大きいようですが、あまり良いことはなさそうです。
▲歯肉へのダメージ
歯肉は歯を囲むように付近に存在します。歯肉は皮膚と違い傷つきやすいので歯ブラシで力強く磨くと傷ついたり、口内炎ができたりします。無理な力を加え続けることで退縮したりすることもあります。
▲実は磨き残しが多い
ゴシゴシ磨くと、歯ブラシをそれなりに大きく左右上下に動かしています。そうすると歯ブラシの毛先が細かい部分に入り込みにくくなり、磨き残しが多くなる原因になります。
▲毛先が1週間くらいですぐ広がってしまう
歯ブラシの毛先が歯の面にあたって歯垢をおとすわけですから、毛先がバラバラにひろがった歯ブラシでは、歯垢がきちんと除去できずに効率が悪くなります。
開いたら歯ブラシを頻繁に交換するのも大変です。
「小学生の時に歯ブラシをしっかりグーで握って、円を描くように磨くと教わったよ」
昔に教わった磨き方を継続している方もよくいらっしゃいます。
歯の表面を磨くにはよさそうです。歯ブラシがきちんと持てなかったり、力の弱い子供などには適した磨き方かもしれませんね。
小さい頃に教わった歯の磨き方を、大人になっても実践しておられる方は、余計な力が入りがちでゴシゴシ磨いているかもしれません。
手先の器用さや口腔内の状態などは年齢とともに変わっていきます。今の自分のお口の中にあった歯磨きの仕方を知っていた方が、効率よく正しく磨けると思います。せっかく時間を割いて磨いているのに、磨き残しが多いのでは残念ですよね。
むし歯や歯周病にならないためには「磨いた」ではなく「磨けている」が重要です。
そのためにも、まずはゴシゴシ磨きにならないようにご自分やご家族の磨き方をチェックしてみましょう。
〔ゴシゴシ磨きにならないためのポイント〕
〇歯ブラシの持ち方や持つ位置を確認してみましょう
歯ブラシは、自分の持ちやすい持ち方でよいと思いますが、下記のようなことを知って意識するだけで磨き方や力加減が変わりますので、覚えておいていただけるとうれしいです。
〇歯ブラシを小刻みに動かしてみましょう
2~3mm程度のふり幅で小刻みに動かし、1本ずつ歯を磨くイメージで
この動かし方をするには、歯ブラシをペングリップで握らないと操作が難しいかもしれません。
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〔ペングリップ〕
指先で歯ブラシの向きを変えやすいので、小回りがききます。いろんなところに歯ブラシの毛先をあてやすい。 |
脇がしまった状態で歯ブラシを動かせるので、動作が安定し、力の加減や操作もしやすいです。
〔パームグリップ〕
無意識に力がはいりやすくなります。
持つ位置で余計な圧がかかりやすくなるので、注意が必要です。 脇が開いた状態になることが多いため、安定感が欠け小刻みに歯ブラシを動かすのは難しくなります。 手首の返しがききにくいため磨きにくいところが多いです。 歯ブラシの持ち方は、自分の磨きやすい持ち方で良いとは思いますが、上記のようなことが起こりやすいことを意識したり、磨き残しを指摘されたとこだけでも持ち替えたりする。 |
〇歯磨きの時、歯にかかる圧は150~200gくらいが理想です。
具体的にどのくらいかの目安にしてください。家にキッチンスケールがあれば、一度押し当ててみるとより分かりやすいです。日頃ゴシゴシ磨きをされている方であれば、「こんな軽い力で汚れはおちるの?」という物足りない感覚だと思います。
〇歯磨きの音は自分だけに聞こえる程度の「シャカシャカ」小音が理想です。
「シャカシャカゴシゴシ」という音が、横にいる人にまでしっかり聞こえるような磨き方は力が入りすぎです。
お子さんや介護が必要な方の歯磨きをされている時、嫌がられたことはありませんか?嫌がる原因のひとつとして、ゴシゴシ磨きがあるかもしれません。自分でゴシゴシ歯磨きするのは加減するので痛くありませんが、人からされるゴシゴシ磨きは痛いし怖いです。お口の中も見えにくいので、歯以外のところも一緒にこすってしまうことが多いです。
狭いお口の中で歯ブラシを大きくゴシゴシ動かすと歯だけではなく歯肉や小帯など余計な部分もこすっています。
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ご自分の歯磨きと比べていかがですか?
力強くゴシゴシ磨いても、良いことはなさそうですよね。今の自分に合った歯磨きを実践して、磨き残しを減らしましょう。
投稿者 加藤歯科医院 歯科衛生士 松本